『漫游』酷论坛>『动漫主题讨论区』>[六轩岛二日游]fool's ma ..
右代宮戦人@2009-08-02 13:01
引用
最初由 右代宫嘉音 发布
日文版的话你留邮箱我可以发你,中文版的你就只能等我慢慢翻了
PS:另外还有篇《贝熊的白色情人节》,贝熊可是暴走了的- -
我两篇都要,邮箱~~~
右代宫嘉音@2009-08-02 13:10
夏妃夫人的呢?我好一起发
右代宮戦人@2009-08-02 13:17
引用
最初由 右代宫嘉音 发布
夏妃夫人的呢?我好一起发
伯母现在不在线啊[/KH]
PS:透露一下贝熊为什么暴走啊:)
右代宫嘉音@2009-08-02 13:19
好了,我给你发了,是docx格式的- -不行的话我直接贴上来好了
右代宫嘉音@2009-08-02 13:21
算了,算是个福利,大家都有得看,我直接打黑板上了。
七姐妹情人节
[sp]
悪魔の厨房には、大釜がなければならないと伝統的に決まっている。
その大きさは一般家庭の湯船よりも大きい、
・・・・・・ニンゲンを煮込めるように作ってあるのだからそれも当然だ。
何か物騒な料理が・・・? それとも悪趣味な拷問が・・・?
大釜に満たされたお湯にはボゥルが浮かび、その中には刻まれた数種類のおいしそうなチョコレートが・・・。
そこにスポットライトが当たり、シェフ帽を被ったロノウェが登場する。
「さて、テレビの前の奥様方お嬢様方、よろしいですかな? 充分にチョコレートを溶かして熱しましたら、それを先ほど用意した冷水のボゥルに入れて冷やします。その間は、混ぜて混ぜて混ぜて。ぼんやりしていると縁から固まってしまいますよ。一度溶かした男心は冷めさせないように、混ぜて混ぜてとろけさせましょう。」
・・・・・・という、この季節恒例の手作りバレンタインチョコ講座を、実に楽しそうに演じている。
「以上でテンパリングは完了です。続きまして、このチョコを円状に一口サイズに搾り出してまいりましょう。ほら、素敵ですね。チョコのクッキーみたいですねぇ。」
ロノウェは実に慣れた仕草で。実に優雅にオーバーアクションに、ちょんちょんとチョコのメダルを次々に作っていく。
「そして、その上に、様々な飾り付けをして貴女だけのオリジナリティを出して見ましょう。私からは、基本中の基本ということでナッツ類をお奨めしておきましょう。アーモンドにピスタチオにカシューナッツ。くるみに葉茶も素敵です。悪魔のスペシャルレシピとしましては、ダチェラの種にエンジェルトランペットの添え花付きで飾り立てるのもお奨め。食べるとあら不思議、意中の彼の本当の想い人の名前が聞き出せてしまうかも?バ
レンタインは乙女の夢の祭典・・・! あなたの素敵で大切な一日が、生涯の記念となるよう、このロノウェ、心よりお祈り申し上げておりますよ。ぷっくっくっく!」
※ダチェラの種もエンジェルトランペットも人体に有毒です。食べないように!(訳著者)
「もちろんもちろん。今回はニンゲンが食べますので、毒草はよしておきましょう。これを冷蔵庫で冷やしましたら完成です。さぁ。奥様方、拍手拍手。ぷっくっく!」
台所の妖精たちが、ぱちぱちわーわーとロノウェを讃える。それに深々と優雅なお辞儀を返し、ロノウェのバレンタインクッキングは終了となった。
ロノウェはそれを、綺麗な飾り箱に収める。それは主、ベアトリーチェに献上するためのものだ。
「お嬢様もバレンタインチョコくらい手作りなさればいいのに、拙いチョコの方が、殿方のハートを鷲掴みできちゃう時もあるのですがねぇ。」
ベアトの分を除いても、チョコはまだ充分に余っていた。
ロノウェは手を叩き、パンパンとよく通った拍手の音を厨房中に響き渡らせる。
________________________________________
「出てきて結構ですよ。調理の間、気配を消してくださりありがとうございます。その気遣いのご褒美に、皆さんにもお裾分けしてあげましょう。」
「きゃっははは! やぁんロノウェさまぁン、太っ腹~!」
一番最初に姿を現したのはベルゼブブだった。湯せんをしていた大釜の中からドボンと姿を現す。
一人が姿を現してしまっては、もう他の姉妹も隠れていてもしょうがない。
冷蔵庫の中やら鍋の中やら、あちこちから、手や足がにゅうっと伸び出してきて、七姉妹が次々に姿を現す。
「も、申し訳ありません、ロノウェさまっ・・・。つい覗き見のような真似事を・・・。」
「いえいえ、いいんですよ。七姉妹の皆さんとて皆、乙女。バレンタインにハートがときめかないわけもない!皆さんが興味津々なのは当然のことですよ。」
「ロノウェさま~、食べてもいいですかぁ? 早く食べたいっ、早く食べたい!」
「もー、ベルゼは少しは大人しく出来ないの!?慌てる乞食はもらいが少ないって言うのよッ!」
興奮するベルゼブブに叱り付けるサタン。賑やかな煉獄の七姉妹は今日も平常運行だ。
「お待ちなさい、皆さん。確かに私はチョコをお裾分けするとは申し上げましたが、食べて良いとは一言も申していませんよ。」
「え、ええええぇええぇぇえぇぇ・・・!! そ、そんなぁ・・・。食べちゃいけないチョコなんて、そんなのあんまりです、拷問ですッ!」
「・・・ベルゼにお仕置きする時には、これからそうすることといたしましょう。・・・良いですか、皆さん。これはバレンタインのチョコですよ? 女性が男性にチョコを贈る素敵な一日のためのチョコレートです。」
「な、なるほどっ。・・・つまり、私たちにそのチョコを、男性に配れと?」
「違いますよルシファー。配るのではありません。皆さんの気になる男性の方に、プレゼントしてくるのです。せっかくのバレンタインデーではありませんか。本編世界では殺したの殺されたの物騒なことばかり!せっかくの舞台裏の余興ではありませんか。たまには皆さんも乙女らしい、甘酸っぱい気持ちを楽しんできてください。それが私から皆さんへのお裾分けでございますよ。」
「「「「「「「ざわざわ、がやがや!」」」」」」」
七姉妹たちは思わぬ展開にびっくり。
異性に杭を捻じ込むならまだしも、チョコを贈ることになろうとは・・・。
「きゃ~~ン、ステキぃいいぃ! ありがとうございますゥロノウェさま~! だッれにチョコをあげちゃおっかなぁ!」
色恋沙汰に一番興味津々のアスモデウスは、頬を紅潮させて、きゃっきゃと喜ぶ。
「そうそう。アスモが一番素直ですね。いい子いい子してあげましょう。さ、皆さん。一つずつ。異性に気になる人がいなければ、同性でも結構ですよ。とにかく、絶対にひとりひとつを誰かに渡すように。渡さなかったら・・・・・・・・・。」
「渡さなかったら・・・・・・・・・?」
ルシファーが恐る恐る聞く・・・。しかしロノウェはにっこり微笑んだまま答えない。こういう時のロノウェが地味に怖い。
四の五のごちゃごちゃ言ってると、大目玉をもらいかねない。彼が微笑んでいる内に承諾した方がいいだろう。
こうして、七姉妹のバレンタインデーは、義務として行われることとなったのだった・・・。
「・・・と、言うわけだ。各自、七姉妹の一員として見事本任務を全うしてもらいたいっ。以上、散れッ!」
「「「「「「はぁい、お姉様ッ!!」」」」」」
ルシファーは散開を命じると、七姉妹たちは一斉に爆ぜて、飛び回りながら厨房を飛び出していく、フライパンや鍋などの金物をやかましく打ち鳴らしながら。
さて、煉獄の七姉妹たちは、それぞれ誰にチョコレートを渡すのだろうか・・・?
何しろ、普段から杭を捻じ込んだり、ぐりぐりしたり捻り出したりと、物騒なことが専売特許だ。チョコレートを与えて、施すなんて経験はまるでない。
いざ、誰かに渡せと言われても、簡単には思いつかない。
しかし、色恋沙汰で普段から頭がいっぱいのアスモは、渡す相手がとっくに決まってるようだった。
「え、何々、あんた、渡す相手決まってるの?! 誰、誰!」
「うっふふふふ~♪そんなの決まってるじゃない~! EP4から登場の素敵な白馬の王子様! 天草十三さまに決まってるじゃな~い!」
「・・・あ、天草か。はー・・・、なるほど、それは考えなかった・・・。」
「いやぁだ、お姉様方ァ! 新しい男性キャラは全部チェックしてなきゃ~。素敵じゃない、十三さま♪ 容姿もイケてるし、ストイックで野生味あるのに野暮ったくないしっ。あぁん、私、一番乗り~!!」
言うが早いか、アスモは杭に姿を変えてすっ飛んでいく。
どういう風にチョコを渡すのか気になって、他の姉妹たちもついていく。
「天草さまッ! はい、バレンタインのチョコレートです! 受け取って下さいッ!」
・・・割と正攻法、・・・いやむしろ真正面からの強襲だった。
「あ、あいつ勇気あるわね・・・。こういうのって、しどろもどろと回りくどく渡すのが情緒じゃないの?!」
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「男は割りと早い者勝ちと聞く…。今時、木陰から見守る狙撃型恋愛は流行らんのか…。」
「それにしもあの子、もうちょっと恥じらいとかないの?! あーも真正面から明け透けに! 最近の若い子はっ。」
影からボソボソとケチをつける姉たち。
天草は照れもせず、笑顔でチョコを受け取る。
…結構、もらいなれてる感じの仕草が、男心的にムカつくが、女心的にはキョドったりされるよりずっとカッコイイ。
「サンクス、キュートなお嬢さん。君の手作りかい?」
「ハイ、そうですっ、天草さまのために手作りしました~!」
「あ、あいつ、ヌケヌケと嘘をついてるわ…!」
「天草には本当にアスモの手作りかどうかは検証不能よ! 悪魔の証明ね!」
「それにしもアスモめ、手馴れているな…。普段からイメージトレーニングを欠かさないに違いないっ。」
「何やってんのよ、私たち! 一番下の妹に先陣切られちゃったわよ?! 恥ずかしくないの?!」
さすがは色欲のアスモ。ギャルゲー全般で王道展開を完全に習得済みだ。
仲良く並んで座ってさっそく梱包を解き、ロノウェ特製チョコを振舞うのだった。
「ハイ、天草さま! あ~~~ん♪」
「あーーーん」
仲睦まじい恋人同士のような世界を、瞬時に構築してしまている。恐るべしっ、色欲のアスモ!
「あ、あいつ、すごいわね…。初めてアスモに戦慄したわ…。」
「いーなー、美味しそうだなぁ。どーしてもあげなきゃいけないの? 自分で食べちゃいたーい!」
相変わらず、チョコはあげるより自分で食べたいとぼやく、暴食のベルゼブブ。
しかし、次の天草の言葉に、耳が猫のようにピンと立つ。
「ステキなお味だったぜ、お嬢さん。こりゃ、俺もホワイトデーには負けないお返しをしねぇとな。」
「わっわっわっ、本当ですかッ、天草さま!! きゃーん、楽しみに待ってますねー、きゃ~ん!!」
アスモは、その約束に躍り上がって喜ぶ。そして物陰でも別の意味でベルゼが踊り上がって喜ぶ。
「そ、…そうか、チョコをプレゼントすれば、ホワイトデーに倍返し、三倍返しなんだ! わらしべ長者作戦ね! 今ここでチョコを我慢すれば、ホワイトデーにはそれ以上のお返しが! ベルゼ、馬鹿じゃないもんっ、たくさんのお返しのために一ヶ月くらい我慢できるもん!」
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ベルゼは、バレンタインデーとホワイトデーを天秤に掛け、チョコを我慢する方が後に得が出来ると勘定する。
その算段がつけば行動は早い。要は、誰にホワイトデーのお返しをもらいたいかだ。送る相手は極めて想像に容易。
つまり、ホワイトデーに一番美味しいお返しを“作って”くれそうな相手だった。
「は、…はぁ。わ、私に、ですか…。」
「えぇ、ハイ、郷田さまァ。貴方のことを思って、最高のチョコを作りましたァ。ぜひどうか召し上がってください~!」
案の定渡す相手は郷田だった…。現金なヤツ、と姉妹たちは愚痴る。
天草と違い、郷田はバレンタインにチョコをもらったという経験は多くないらしい。
割と健全にどぎまぎしているようだった。
「いやぁ、ははは…。まさかこの歳にもなって、こんな若い女の子から、こんなにも美味しそうなチョコをもらえるとは…。て、照れますなァ、なははははは……。」
「さぁさ、召し上がれ召し上がれ! そしてホワイトデーには三倍のお返しを下さいなッ! なっなっな♪」
郷田は顔を真っ赤にしながら、チョコをぱくりと食べる。
…しかし、その紅潮した頬をみるみる醒めていく。……あれ、美味しくなかった…?
「…あ、あの。お口に召しませんか…?」
「お嬢さん…。このチョコはあなたの手作りと申しましたか…?」
「え、…えぇっ、そうですっ。私が作りましたー!」
ベルゼがしゃあしゃあと嘘をつくと、郷田はすくっと立ち上がる。…その表情に浮ついたものはなかった。
「…ありがとう、お嬢さん。どうやらこの郷田、しばらくぬるま湯で寝ぼ切っていたようです。……これほどの腕前とは、…これはもはや私への挑戦ッ、そうですね、お嬢さん! ふぬおおおおぉおおおおぉおお!! こんな若い少女がこんなにも素晴らしいチョコを! ホワイトデーまで一ヶ月! 今からベルギーに行って修行をッ!! この郷田、味でだけは負けられんンンンんぅおおおぉぉいいいいぉおおおッ!!」
ベルゼは何事かと目を白黒させていたが、とりあえず、次のホワイトデーがとても楽しみなのは間違いなかった…。
「なるほどね。まぁ、だいぶ要領はわかりました。あまり構えても仕方がないんで、私もさっくり渡してきます。」
「えっ、何、マモン…! 誰に渡すかもう決まっているの…?!」
マモンは答えず、杭になってすっ飛んでいく。カキコキカキコキカーン!
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「うりゅー! ちょこれーとだー!!」
「あんただけの分じゃないわよ、縁寿さまと分けっこよ、あれ、縁寿さまはっ?」
「うりゅ、戦人や天草にチョコをあげるって言って、銀座までお買い物。」
「あー、縁寿さまって手作りよりマネーパワーで片付ける方でしたっけ、じゃあ、その内、
帰ってくるかな。」
「縁寿も、自分の分のチョコが待ってるとは思わず、きっとびっくり! 縁寿を驚かしち
ゃおう!」
「それ、いいアイデア。あと、マリア卿も呼んでいらっしゃい。バレンタインに、女の子が
チョコを食べちゃいけないってルールはないはずだわ。」
「うりゅー!早く食べたい、マモンのチョコ、早く食べたいっ、うりゅ~!」
「くす。一個だけ摘み食いする?」
「摘み食いするー!」
「うふふ、私も摘み食いしたくなっちゃう・・・。 あぁん、さくたろ、もう我慢できなーい
ッ、モフモフさせてぇ~♪」
「うきゅ?! ぎゅー! やめてマモン~~、うぎゅ~、うりゅ~!」
「モフモフ! モフモフ~!!はァん、ねぇねぇ、耳も噛んでいい・・・?」
「だめだよだめだよ、うりゅ~~~~~ッ!」
「マモンのヤツ、あいつもなかなか要領がいいわ・・・!」
「ほのぼのといい話に持って行きつつ、さりげにさくたろを独占してるわ、さくたろは私
たちみんなの共有物なのにィ!」
「次は誰?何だか末っ子から順番みたいな感じだわ。」
「・・・となれば、次は私が行こう。」
「ベルフェ、心当たりはあるの?」
「いわゆる想い人というやつはいないが、縁のあったニンゲンはいる。」
「あー、わーかった。」
次はベルフェゴールが飛んでいく。彼女と縁があったニンゲンというと、きっと留弗夫
に違いない。
EP3で一対一で対決した。そういう古風な戦いが好みの彼女にとっては、なかなか忘れ
がたい思い出のはずだ。
「妻帯者に贈るのはフェアかどうかわからんが。好敵手の証として、これを贈る。」
「ひゅぅ、まさかお嬢ちゃんからもらえるとは思わなかったぜ。ありがとな。どうだい、
その後は、元気でやってるか。」
「う、うむ、まぁ、いつもの通りにやっている。」
「お前さんは、悪魔のくせに律儀すぎる。・・・・・・俺ぁ、そういう女が、しなくていい気苦労
を背負い込んでるところを、嫌になるほど見てきた。影で苦労してねぇか、それだけが心
配でな。」
「・・・・し、心配されるようなことなんてないぞ。私は模範的な家具だから、そこはうまく
やっている。」
________________________________________
普段、案じられることのないベルフェは、留弗夫に包容力のある心配をされて、つい戸惑ってしまう。親切にされるのに弱いのだ。
「少しズルくなれよ。その方が可愛いぜ、お前はよ。」
「ズ、ズルくとはどういうことか…。お、お前、肩が近い…、というか、煙草臭いっ…!」
「いいか、ズルさってのはな…? 耳を貸せ。こっそり教えてやるよ…。」
「み、耳をか…? わ、わかった…。」
耳を貸せと言われたので、ベルフェは律儀に耳を差し出す。
……留弗夫はベルフェの耳元に口を寄せ、…………。
「うっわ、…うっわうっわうっわ…、オ、オトナだ…、はひぃ~ッッ!」
「ルシ姉、これ以上は見ちゃ駄目です駄目です! あいつひどいわ、奥さんいるのに女の子口説くなんてひどいわッ! ……あれ? レヴィア姉がいない?!」
その頃、レヴィアタンは、同じくかつての好敵手、霧江のところにいた。
なるほど、ベルフェが留弗夫にチョコを渡すのなら、彼女が霧江に渡してもおかしいことはない。
まさか自分がチョコをもらえるとは思わず、霧江は苦笑いを浮かべる。
「やだ、女の子にチョコもらっちゃった。…でも、ありがと。嬉しいわ。」
「嫉妬を司る私が嫉妬で負けたからね。あんたには一応、一目置いてんの。」
「そんなので尊敬されたくないわ。あら、素敵。これ手作りなの? 美味しそう。」
「きっと美味しいわよ。先にベルフェにもらった留弗夫も、美味しいって言ってたもん。」
「…………え、何? 何の話?」
霧江は笑顔の表情のまま、気温だけを零下に下げて聞きなおす。
レヴィアは、嬉々としながら留弗夫とベルフェのことを話す。
二人で肩を並べて座って、チョコを手渡ししてから、二人の肩が近付いて云々…。
「ねぇ、いいのかしら、それって浮気じゃないの?」
「えー? くすくすくす、そんなことないわよ。留弗夫さんは私一筋だもの、浮気なんかしないわよ。24×365×2349875663495733…、」
「きゃー、さすがは嫉妬のお師匠様ぁ! もっともっともっともっと! 惚れ惚れしちゃう嫉妬を見せてェ、きゃ~ん♪」
霧江は笑顔のまま、液体窒素のような冷気を漂わせながら、のっしのっしと歩き去っていく。その後を、きゃっきゃと鼓舞?しながらレヴィアがついていく。
嫉妬を司るレヴィアタンらしい、チョコの渡し方ではあった…。
あと、残ったのはルシファーとサタンの2人。煉獄の七姉妹では意地っ張りなことで有名な2人だ。
順番的には、次はサタン。
誰に渡すかはさっきまで決まってなかったが、ベルフェたちのお陰で思い当たった。
彼女もまた、かつて戦ったことがあり相手のところへチョコを持って行く。
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「…………いらない」
嘉音は胡散臭そうにチョコを一瞥すると、冷たく言った。
他の姉妹たちは、ひょいひょいっとうまく手渡せていたので、自分だけは断られて、サタンはかなり狼狽する。
「なッ、何で素直に受け取らないのよ! 別に怪しいものなんか入ってないわよ、普通のチョコよッ、受け取りなさいよ!!」
「貴様からそんなものをもらう謂れはない。」
「それはその、……バレンタインデーとかいうヤツよっ。そんなのどうでもいいでしょ?! いいから早くもらいなさいッ! 女に恥を掻かせるつもり気?! この青瓢箪ッ!!」
「な、何だと…! 僕を愚弄するためだけに、ここまで来たというのか!」
情けない頼りない等の悪口は嘉音には特に禁句だ。嘉音の怒りは容易く沸点を迎えてしまう。
「消え失せろ! 貴様からは何の施しも受けない!」
「きゃッ、…な、何よ、そんなに怒ることないでしょ?! チョコを渡したら消えるわよ…! 早く受け取んなさいッ!! 私だって嫌々やってるんだからッ!」
他の妹たちにはみんな出来たことなのに、自分だけうまく行かず、サタンは困惑を隠せない。とにかく早く押し付けてこの場を逃げたいと、顔を真っ赤にして歯軋りしている。
…当の嘉音も、なぜそんなにされてまでチョコを押し付けられなければならないのかさっぱりだ。
するとそこへ陽気な朱志香の声が…。
「嘉音く~ん、いる~? あ、あのッ、今、ひっ、暇かな! ……っておわッ! お、お前、煉獄の七姉妹のッ!」
嘉音のために持ってきたであろう可愛らしく包装された箱をどさりと落とし、朱志香は両手をポケットに突っ込む。それを引き抜けば臨戦態勢。両手にはメリケンサックの鈍い光りが!
「な、何で私だけうまく行かないのよ…! 他の妹たちはみんなうまく行ってるのに…!!」
「嘉音くんにちょっかい出すなよ! どっかへ行け、魔女の家具め! お前ひとりなら、私と嘉音くんの敵じゃないんだぞ!」
「こ、こいつ…! EP4で急に戦闘力が上げたからっていい気になって…!」
「………消え失せろ。お前一人なら、僕一人だって遅れは取らないぞ。」
「な、何よ、これぇ…! わ、私はチョコを渡しに来ただけでしょ?! バレンタインじゃないの?! 何でこんな目に遭わされなくちゃならないのよッ?! 何で私だけうまく行かないの?! みんなはうまく行ったのにどうして私だけッ! どうしてよどうしてよッ、わけわかんないッ!! ううぅうぅぅぅぅ…ッ!!」
「ワケわかんねぇのはお前の方だぜッ! どうせお前のチョコなんて、怪しい毒か何か入ってるんだろ。そんなの嘉音くんに食わせられるかッ!」
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「ぐッ、……うぐぐぐぐぐッ! お願いだからもらいなさいよッ、何で私がこんなにまで必死になってチョコ渡さなきゃならないのよ、どこまで私に恥を掻かせれば気が済むのよ!! 馬鹿ッ恥知らずッ、覚えておきなさいよッ、今度きっと殺してやるッ!!」
サタンはチョコの箱を嘉音に投げつけてぶつけると、悔しさで顔を真っ赤に歪めながら、その姿を黄金の蝶の群れに変えて消える。
「………な、…何なんだ、あいつは。」
「二度と来るなー! がるるるるるー!」
何が何だかわからず困惑する嘉音に、サタンが消え去った虚空に唸りつける朱志香。
嘉音の足元にはサタンの投げつけた箱があった。
…拾って、後で返すべきだろうか迷っていると、すぐに朱志香がそれを拾う。
「駄目だぜ、悪魔のチョコなんて食べちゃ! 絶対に何か入ってるに決まってる。これは私の方で処分しておくからッ!」
「……それくらい僕の方で処分しますので…、」
「だァめ!! 私が処分するぜ! 嘉音君は箱にも触れちゃ駄目ッ、がるるるるる…!」
これだけは譲らないという強い形相で、朱志香がその箱を奪う。
何で悪魔のチョコを、そんなにもむきになって朱志香が拾うのか、嘉音にはよくわからなかった。
「……それにしても。何しに来たんだろう、あいつは。」
「悪魔なだけに、魔が差したんだろうぜ…! あ、そそ、それより嘉音くんっ、その、こ、これ…!」
今のサタンのチョコ騒ぎは一体なんだったのか…??
何が何だかわからないまま、嘉音は今度は、義理だ義理だと連呼する朱志香のチョコ騒ぎに巻き込まれるのだった…。
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「うううぅううぅうぅ、ひっく、ひっく…!」
「えー、やだぁ、サタンお姉様ァ、みっともな~い!」
「チョコひとつ満足に渡せないなんて、情けな~い!」
妹たちはサタンを嬲る嬲る。…失態があったらフルボッコなのが七姉妹の不文律だ。
そんなのを見せつけられて、ルシファーは急に不安になってしまう。
ルシファーは表向きは長女として幅を利かせているが、実際は、姉妹で一番、要領が悪
いことを自覚している。
サタンがうまく行かなかったのだから、自分がうまく行くわけがないと、急に恐ろしく
なってしまう。
……どうしようどうしよう…! でも、ちゃんとチョコを誰かに渡さなかったらロノウ
ェさまに怒られてしまう! そうしたら、妹たちにはきっとサタン以上に酷い目に遭わさ
れる…!
「ど、どうしたものかしら…。……トラブらないであっさりと受け取ってくれそうな男は
いないかしら…。」
譲治とかどうかしら。あいつ、お人好しそうだし、ポイと渡したらあっさり受け取って
くれそう。
……あぁ、でもきっと紗音がしゃしゃり出て来るに違いない。アイツ、ここぞという時
はやたらと頑固でおっかないから!
「……誰かに渡した、ということにして、こっそり処分しちゃった方がいいかも…。」
うん、多分、それがいい……。
姉妹たちがサタンをいじめている間に、こっそりこれを処分……。
「ルシ姉の考えてることなんてお見通しなんだから!!」
「ひッ!」
もうサタンいじめタイムは終了していた。
サタンは、どさくさに紛れてルシファーが自分だけ逃げようとすることくらい察しがつ
いていたのだ。
「私たちには威張り散らすくせに、いつもこっそり逃げ出すのがルシ姉なんだから! さ
ぁさ、お前たち! ルシ姉を逃がすんじゃないよ!」
「「「はぁい、お姉様ッ!!」」」
サタンの号令に妹たちが、腰を抜かしてへたり込むルシファーを取り囲む。
「ねぇ、ルシファーお姉様ァ。お姉様は誰にチョコをあげるのかしらぁ? 長女に相応し
い、優雅で素敵で、そして濃密な愛のバレンタインを見せてくださるのよね…?」
まずい、捕まった……。ど、どうしよう…、誰にも渡すあてがない…。……どうしよう
どうしよう…。
ルシファーの顔が見る見る青ざめていく。その表情は、何よりも雄弁に、逃げようとし
た胸中を物語っていた。
誰に渡すの、どうやって渡すのと囃し立てる妹たち。絶望的な表情で俯き震える長女…。
________________________________________
「おう、太もも姉ちゃんたちか。相変わらず、姉妹仲良くやってんな。」
「な、……右代宮戦人…!」
「えぇ、そうよ~、煉獄の七姉妹はみんな仲良しなの。ね~、みんなぁ!」
「「「「はァい、仲良しで~す!」」」」
ルシファーは目に溜まった涙を大急ぎで拭き、同じ様に取り繕う。
「……何だ、その箱? あぁ、そーか、バレンタインだもんなぁ! へへ、お前たちも普
段、物騒なことを言ってる割には、可愛げのあるとこもあるんだな。」
戦人はルシファーが持っているチョコの箱に気付き、へらっと笑う。
……う、これは千載一遇のチャンスかも。戦人ならノリが良さそうだし、案外さらっと
もらってくれるんじゃ…。
「う、……右代宮、……戦人ッ!」
「あん? 何だい、太もも姉ちゃん。」
「ふ、太ももじゃないわよ、ルシファーって名前があるわよ…!」
「そりゃすまねぇな。んで、そのルシファーちゃまが何か用か?」
「…こっ、……こっここっ、」
ルシファーは、赤面してふるふると震えながら、チョコの箱を突き出す。
いくら鈍感な戦人でも、そのお膳立てされた状況下では、それが何を示しているのかよ
くわかる。
「……え? お、……俺に、…それ……?」
「…う、……受け取って下さいッ、お願いします……!」
ものすごい大真面目のルシファーに、チョコを突き出される。
それは必死も必死。姉妹たちに失態を嬲られまいと必死なのだ。
ニヤニヤと意地悪そうに見守る妹たち。しかし戦人にはそれは、姉の勇気を見守り無言
で応援するように見えたのかもしれない。
戦人はにやりとウィンクしながら、まるで父譲りの笑顔で笑う。
「…………え、」
「ありがとな。今日ばっかりは、抉るだのブッ殺すだのは休戦だぜ。ありがたく頂戴する
ぜ。」
おおおおおおおぉ、と妹たちが歓声を上げる。サタンだけはチッと舌打ちをする。
ルシファーは、戦人が救世主に見えて、キラキラと後光さえ見えるのだった。
「こりゃすげぇな。お前の手作りか!」
「ま、まぁその、そんなところよ……。」
「うん、うめえうめぇ! ありがとな、ルシファー。お前、結構、料理のセンスあるぜ。
物騒なことは止めて、普通に嫁さん修行した方が向いてると思うぜ?」
「……む、む…。それは我ら家具への最大の侮辱、聞き捨てならないっ。」
「冗談冗談! じゃあなご馳走様! ホワイトデーには期待しろよ、シーユーアゲイ
ン!」
それ以上のお世辞はかえって機嫌を逆撫でするに違いないと悟り、戦人はキザ台詞を残
して去って行った…。
________________________________________
「ふ、…ふふふふふふ…! 見たか! 長女ルシファーに掛かれば、バレンタインなどチ
ョロいもんよ! あのニンゲン風情がホワイトデーに何をお返ししてくれるのか、楽しみ
だわ。」
「…やるわね、ルシ姉の分際で…。」
「運が良かったのよぉ、あそこで都合よく戦人が現れるなんてー!」
「運も実力の内よ! あーよかったよかった、本当によかった。これで煉獄の七姉妹は一
応は任務達成! ロノウェさまにお褒めの言葉がいただけるというものだわ。」
「サタン姉の無様なのは除いてね?」
「あッ、あれもまた作戦よ! ああいう渡し方もあるのよ!!」
「う~ん、サタン姉の技は深いなぁ。王道ツンデレだねぇ。デレがないけど。」
「「「きゃっきゃ、きゃっきゃ!」」」
「見事だわ、我らこそは煉獄の七姉妹! さぁさ、ロノウェさまに任務完了の報告よ!」
「「「「「「はーい、お姉様!!」」」」」」
とりあえず、ロノウェのチョコのお陰で、七姉妹たちは楽しく一日を過ごすことが出来
たのだった……。
七姉妹は顛末を厨房のロノウェに報告する。
「それは良かった。楽しい一日になりましたね。皆さんは下がって結構ですよ、お疲れ様
でした。」
「かしこまりましたっ、失礼しますっ!」
「「「「「「失礼しまーす、ロノウェさまぁ!」」」」」」
実はロノウェは報告を受けずとも、詳細は全て知っていた。
彼にとっては、チョコの甘さよりも、彼女らがそのチョコを巡って色々とやってくれた
一日の出来事の方がよっぽと甘いのだ。
「ぷっくっく。まぁ、年に一度の甘酸っぱい日でございます。たまにはこんなストーリー
もお宜しいのではないでしょうか。私も実にチョコをお裾分けした甲斐があったというも
のです。…………え? オチ? あぁ、もちろんありますとも。その大役は、我らが主で
あるベアトリーチェお嬢様にお願い申し上げましょう。どうぞカメラをそちらの方に。ぷ
っくっくっく!」
ロノウェがパチンと指を鳴らすと、物語と舞台は暗転。
プレゼントボックスを手に、きょろきょろと戦人を探し回っているベアトの姿があった。
「お、いたいたァ! いよ~ォ、戦人ぁ、探したぞー! ハッピーバレンタイ~ン!」
「何だよベアト、お前までバレンタインに浮かれてるのかよ…。」
すっかり出来上がってしまったかのように上機嫌のベアトが、ようやく戦人を見つける。
その手にはとても豪華に飾りつけられたプレゼントボックスが。
「まさか、お前までチョコを持ってきたってんじゃないだろうな…。」
「くっくっくっく、光栄であろう誉れであろう、妾からそなたにバレンタインチョコレー
トの進呈であるぞ! 正座して受け取るがよいぞ!」
「お前までバレンタインかよ、おめでてー魔女だな…。どうせ、食うと何かおかしくなる
毒でも入ってんだろ。」
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「失敬な。こう見えても妾は空気を読める魔女であるぞ。そりゃあ、食べたらアヒアヒ♪になる薬やイヤンイヤン♪になっちゃう薬をゴリゴリと混ぜてはみたぞ? しかし妾は薬などに頼るのは邪道だから、そんなものに頼ったりはしないのだ!」
「…ますます信用できねぇなぁ…。…まぁ気持ちだけは受け取ってやるぜ。食うかどうかは別だがな。」
「食うが良いぞ食うが良いぞ。妾の心の篭った手作りである!」
……ベアトもまた、ロノウェが作ったチョコなのに、手作りだとしゃあしゃあとウソを吐く。
「そっか。手作りってんなら、一応拝んでおかねぇとな。…どれ。黄金の魔女さまの料理の腕前を拝見させてもらおうじゃねぇか。」
あのベアトが手作りとは…。
怪しくもあるが、バレンタインのためにチョコを自ら作るその苦労を汲み取らなければ男ではない。戦人はこの場はベアトの顔を立ててやることにする。
「くっくっくっく! さぁ箱を開け、驚くが良いぞ!」
「どれ。………おや? これは……。」
「どうだ! うまそうなチョコであろう! 妾の手作りであるぞー!」
戦人は目を丸くする。ついさっき、ルシファーにご馳走になったチョコとまったく同じものだからだ。
そして確かそれは、ルシファーの手作りじゃなかったけ???
「おい、ちょっと待て、ベアト。このチョコ、本当にお前の手作りなのか?
「うむ、そうであるぞ! お前のために心を込めて作ったのであるぞ!」
「復唱要求。“このチョコレはベアトリーチェの手作りである”。」
「ふげ?! んな、…なな、なんでだッ?!」
「そぉら、思った通りだ。何が手作りだ、いい加減なこと言いやがって、俺は知ってんだよ。これ、ルシファーに作ってもらったんだろ?」
「ル、ルシファー?! 何でルシファー…???」
「確かにルシファーのチョコはうまかった。あいつ、物騒なことばかりしてるわりには、なかなかチョコ作るのうまいよな。もう少しお淑やかになって花嫁修業を積めば、いい嫁さんになれるぜきっと。ホワイトデーには奮ってお返しをしてやるつもりだ。だがお前は何だ?! 人にチョコを作ってもらって、それをいけしゃあしゃあと自分でが手作りしたとウソを吐くとは! お前みたいなウソ吐きのチョコはいらん!」
「そ、そんなぁあああぁああぁ戦人ぁあぁぁぁぁあぁ……。」
戦人はすたすたと立ち去ってしまう。
後には、トホホホと涙を浮かべ、どうしてウソがバレたのかさっぱりわからないベアトが取り残される。
ひとつわかるのは、なぜかどうしてかは知らないが、バレたのとルシファーが関係あるらしいということだけだ。
________________________________________
「ル、ルル、ルシファあああぁああぁあぁぁ、妾の家具の分際で……、よくも戦人に告げ口したなぁああぁぁぁ!! というかあいつめ、ロノウェが作ったチョコなのに、自分が作ったとかウソを吐くとはけしからんヤツ! 折檻だお仕置きだ拷問だぁああああああーッ!!」
嘘吐き魔女のバレンタインデーは、こうして暮れて行くのでした……。
その頃、ルシファーは、ホワイトデーには何かお返しをやるからなと戦人に言われ、案外、バレンタインも捨てたものではないと、こっそりホクホクしているのでした……。
おしまい、ぷっくっくっく。
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右代宫嘉音@2009-08-02 13:26
贝熊的白色情人节
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「きゃーん♪ いよいよ待ちに待ったホワイトデー! 何がもらえるかなっ、何がもらえ
るかなっ、た~の~し~み~~!!」
三度の飯より色恋沙汰が大好きなアスモテウスにとって、待ちに待った日だった。
「ホワイトデーとはつまり、バレンタインデーのお返しなわけか。」
ベルフェゴールが、理屈では知っているが、実際にはどのようなものかわかりかねると
いう仕草で聞く。
この時ばかりは、末っ子アスモも生き生きして姉の問いに答えるのだ。
「ホワイトデーはぁ♪ バレンタインのお返しにお菓子をもらうだけの日じゃないんで
す! 贈った愛情にどれだけ応えてくれるか、相手の愛情の深さや脈、その他もろもろ、
ワビとサビを楽しむ、古式ゆかし~い行事なんですっ! もちろん、贈ってもらうものの
値打ちでも愛情は計れますがー、それだけで差をつけるのはつまらなーい! よりセンス
のいいお返しは、時には値段や価値では測れない場合もありまーす! そこら辺を楽しみ
ながら、相手の気持ちと自分の気持ちの温度を測って、より親密になって、新しい恋の出
会いを探す切っ掛けにするのが、ホワイトデーというものなんでぇす! ドゥYOUオー
ケー、お姉さまァ?」
「……そ、…そうか。それは何とも味わい深い行事だな…。」
「ベルゼはぁ! 郷田さまのお返しがすっごい楽しみで~す! ベルギーにまでチョコの
修行に行かれたそうですしー! やっぱりお返しはホワイトチョコかしらァん! 愛情な
んかじゃなくて、チョコの甘さでとろけさせてぇえぇン☆ むきゃ~~~♪」
「アスモはぁ! 天草さまのお返しがすっごい楽しみで~す! あの方、すっごいイケて
てぇ、センスも良さそうだし~! お菓子なんてお子様っぽいものじゃなくて~! アク
セサリとかー、コスメとかーアロマとかー! きゃ~ん、何をお返しして下さるのか楽しみぃ~☆」
アスモとベルゼは、姉妹の末っ子二人組でとても仲がいい。
上の姉たちには微妙に付いていけないセンスで、きゃっきゃとはしゃぎ合う。
「そんなにも浮かれるものかしらね。上級家具たる者がみっともないっ。」
「マモンはさくたろに贈ったんだっけ? お返しとか、やっぱりあるわけ?」
「お返しというか何というか。緑寿さまたちとホワイトデーティーパーティをやろうって
約束になってまして。まぁ、みんなでまったりお茶でもしようかと。」
「何か、マモンが最近遠い人ぉ~! 98年組でいっつも仲良くしてるー、うらやましぃ
~! 姉妹愛だけじゃ足りないのー?!」
「私、愛はいっぱいじゃないと我慢できないんです。ま、強欲なもんで。くすくす。」
ちょっぴり姉たちを小馬鹿にするようにマモンは笑う。
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マモンは案外こう見えて、人の縁を大切にする。友人の人数についても強欲らしい。
何だかんだ言って、七姉妹で一番友人が多いのは彼女かもしれない。
そんなわけで、七姉妹の下3人はホワイトデーに予定があったり期待があったりと、大
いに楽しそうだった。
むしろ、上の姉妹たちの方がホワイトデーに不慣れで、どう待ち望めばいいかわからず、
不安な気持ちを持っていた。
「ベルフェは留弗夫にチョコ贈ったのよねぇ。…あいつからお返しとかあるの?」
「お、お返しのつもりなのかどうかは知らんがその、……買い物をするから付き合えと言
われた。」
「何それ何それ?! それでOKって言ったの?!」
「ま、……まぁその……。…中年男を介助して、怠惰にさせるのもその、私の務めだと思
い………、……。」
「わぁあん、ベルフェ不潔だ、ベルフェ不潔だ、いいもんいいもん、私も霧江とデートす
るもーん!」
「……良かったわね、ベルフェ。ずいぶんとスリリングな一日になりそうよ。」
「る、留弗夫を怠惰にさせるための一日だぞ…! レヴィア姉でも邪魔立てするなら許さ
ない…!」
「邪魔しないもん、霧江と一緒に嫉妬するだけだもんー! ベルフェのデートを、嫉妬に
染まった4つの瞳でずっと追い続けてあげるからね~!」
「@#$&ッ! *#%@$+%!!」
ベルフェらしくない、狼狽した仕草を見せながら、レヴィアタンと揉めながら、ぎゃー
ぎゃーと賑やかにしている。……傍から見る分には、楽しそうだった。
取り残される、サタンとルシファー。
この二人は、何だかいつも流行り廃りから取り残されることが多いようだ。
「どいつもこいつも浮かれ過ぎだわッ。煉獄の七姉妹ともあろう者が情けない!」
「サタンはどうなの。嘉音にチョコを贈ったんじゃなかったっけ?」
「…まぁ、無理やり押し付けただけだしね。お返しが欲しくてあげたわけじゃないし。」
前回のバレンタインデーで、嘉音にチョコを渡そうとしたが、怪訝に思われて拒否され
てしまったし、朱志香にも追っ払われてしまった。
押し付けたどころか、一方的に投げつけてきただけだ。あれをもって、バレンタインデ
ーのチョコの収受が成立したとは、当の本人にだって思えない。
ある意味、一番、お返しの期待できないのが彼女だった。
サタンはプライドが高い。自分だけうまくバレンタインがこなせず、そのことをこの一
月の間、ひどく気にしているようだった。
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と、……そこに人の気配が不意に現れる。
何事かと二人が振り向くと、そこには実に不機嫌そうな表情を浮かべた、嘉音の姿があ
った。
その様子を見る限り、少し前からそこにいたのだろう。
サタンたちが話に没頭していたので、嘉音の気配に気付けなかったのだ。
「か、嘉音ッ…! な、何よ、あんた、何しに来たのよッ!」
サタンは困惑しながらそう叫ぶ。…ただ、何とも恥ずかしいもので、こう口にしながら、
サタンはどうして嘉音が現れたのか察しがついてしまって、顔が紅潮するのを隠せなかっ
た。
しかし、嘉音にはそんな乙女心など察しがつくわけもない。彼の目には、相変わらずサ
タンが不機嫌なようにしか見えていない。
「……バレンタインの時、一方的にチョコを押し付けてきただろ。…すごく迷惑だったが、
だからといって、お返しがないのも無礼だと思ったからな。」
嘉音はそう言いながらポケットから、とても小さいけど、可愛らしく包装した箱を取り
出す。
それをぞんざいに、ぽいっと放る。
その小ささは、如何にも義理だと言わんばかりだが、包装のセンスから決してお安くな
いブランドのものを感じさせた。
嘉音は右代宮家から、決して少なくない給金を得ている。しかし、無趣味な嘉音は特に
お金の使い道を持たなかったため、案外、お金を持っていたのである…。
「…義理のくせにこんなに高級なの買っちゃって。…バカみたい。」
「……安心しろ。お嬢様へのお返しのついでに買っただけだ。わざわざお前の分だけを安
くするために、他の店に足を運ぶのが面倒だっただけだ。」
「………あ、……あっそ。」
「これで借りは返したぞ。……二度とあんな真似はするな。」
それを捨て台詞に、嘉音は姿を消す。
……ホワイトデーのお返しに添える言葉は数あれど、”借りは返したぞ”なんて言葉は
普通ない。しかし、ひねくれた二人にぴったりかもしれないと、ルシファーは思うのだっ
た。
すると突然、ルシファーの方が後から強く叩かれる。
「い、痛ッ、…誰だ…!」
「いよっ、太もも姉ちゃん。」
「ば、戦人…! お前まで、ホワイトデーだというのか…?!」
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「お前、おかしなこと言うヤツだなぁ…。バレンタインに手作りチョコをくれたのはお前
だろうが。そして俺も、必ずお返しするからなーって約束したはずだぜ? 俺ぁ、過去の
ことはいちいち覚えてない主義だが、さすがに一月前の約束を忘れるほど、頭が空っぽの
つもりはないぜー?」
戦人は、背中に隠してた箱を、じゃーんとばかりに見せる。
お店でラップしてもらったんだろうが、これまた戦人らしからぬ丁寧な包装。
…包装というものにはきっと魔力がある。その中身が何であるかを問う前にもう、相手
の心に訴える力があるからだ。ルシファーはそう感じていた。
「お菓子じゃ子どもっぽ過ぎるだろうし。かといって、アクセサリーや化粧品じゃ好みも
あるだろうしな。ほら、紅茶なら多少は好みが違ってもイケるだろ?紅茶は嫌いか?」
「い、いや…、別に嫌いってことは……、」
「そっか、なら良かったぜ! 開けてみろよ。ぜひ香りを驚いてくれ!」
戦人に開けるように促され、ルシファーは綺麗な包装に手をかける。
もちろん、中の紅茶にも興味はあったが、こんな綺麗な包装を解いてしまうのがとても
惜しかった。
重厚な赤に、取っておきたくなるような美しいリボン。そして黄金の蝶のブローチが飾
られていて。
「あれ? そんなの付いてたかな…?」「ッ…!!」
ブローチだと思っていた黄金の蝶が羽ばたき、飛び上がる!
戦人は何事かと驚くが、ルシファーにはもう察しが付いてるようで、さらにもう一手先
の展開を読んで、その意味で驚いた。
そして、黄金の蝶は、黄金の鱗粉を撒き散らしながら、どろん!っと化けて、黄金の魔
女に姿を変える。
「どわッ?! 何だ?!」
「ベ、ベアトリーチェさまっ…?!」
「ばーとらぁあああああぁッ?! そのマリアージュ・フレールは妾のために買ったんじ
ゃないのかよォぉおおおおおぉお?!?!」
「な、なんでお前、俺の買った紅茶がわかるんだよ?!」
「えっ、あっ、うー…! だってだってー。戦人が妾にホワイトデー、何をくれるかなぁ
ッ、って! わくわくしちゃったからそなたを一日、ずーーーっと付けて回ってたわけ
だ! そしたら”でぱちか”なる素敵なところへ行きおって、なかなかお目が高い紅茶を
選びよったものだから! 日頃の妾への感謝の気持ちを込めて、贈答用に綺麗な包装など
しよるものだからッ! 妾への贈り物だと思ってたのに思ってたのに思ってたのにぃいい
いいぃ!! これは妾ではなく我が家具への物だと申すかーッ!! がるるるるるるがぶ
がぶッ!!」
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「あ痛たたたたッたッ、止めて下さいベトリーチェさまッ、髪を噛まないでぇぇぇ!」
「おッ、お前は自分の部下に何やってんだよ、みっともないッ! これはな、バレンタイ
ンにわざわざチョコを手作りして持ってきてくれたルシファーへのお返しなんだよっ!」
「ええぇええぇえぇぇ!! じゃあ、妾へのお返しはァああぁ?!」
「お返しも何も、お前からはチョコをもらってないぞ。」
「えー?! だってほら、前回、妾も手作りチョコを渡したじゃん?!」
「ルシファーに作ってもらったチョコを、自分の手作りだと嘘吐いてな。突っ返しただ
ろ!」
「……ぁー、そう言えばそうだっけ…・午後の紅茶にぴったりのお茶菓子はないかと思っ
ていたら、……。」
「美味かったろ。」
「うむ、美味であったッ。」
割と色々と忘れっぽいベアトは、戦人にチョコを突っ返されたものの、午後のお茶の時
間にはそれをけろりと忘れてしまい、「おぉ、こんなところに美味しそうなチョコが!」
とばかりに、ぽりぽりコリコリとリスのように食べてしまったわけだ。
「………………。…お前、脳みそもリス並だな。…というわけで、お前からチョコをもら
ってない以上、俺がお前にお返しをする義理はないわけだ。」
「それはおかしいおかしいッ! 受け取らなかったのはそなたの勝手であろうが!! 妾、
ちゃんとバレンタインしたもん! ホワイトデーにお返しもらえるもらえるもんッ! ホ
ーワーイートーデぇえええぇえぇ!! 戦人から何がもらえるかなッてずっと楽しみにし
てたのにぃいいいいぃ!!」
「ないもんはないッ。えぇい、駄々っ子みたいにバタバタするな、みっともないっ。はい、
ルシファー。これはお前のな。バレンタインの時はうまいチョコをありがとうな。」
「いや……、あの、……じ、実はあのチョコは……、」
駄々と不機嫌でごちゃ混ぜになった主に遠慮しながら、ルシファーをおずおずと自分も
手作りではなかったことを打ち明けようとする…。
するとその時、ボンッという音が響き渡って、辺りは紅茶の匂いを撒き散らした雲に包
まれた。紅茶の箱が破裂したのだ。
「きゃふッ、けほけほけほッ!」
「てッ、てめぇ、ベアト…! よくも俺の紅茶を! げほげほげほ!!」
咳き込む戦人とルシファーを尻目に、ベアトはきゃっきゃと笑い転げる。
「うっひゃっひゃっひゃ! 妾のもらえぬホワイトデーなら、存在せずとも良いわ! ざ
まを見よルシファー、きーっはっはっはっは!」
ベアトは笑い声を残しながら、無数の蝶の群れになって姿を消す。
________________________________________
彼女にとって、ホワイトデーはクリスマスのような日という認識だった。
バレンタインデーに予め、男にチョコを贈っておくと、ホワイトデーにはきっとわくわ
くする何かをプレゼントしてくれるに違いないと。そんな風に考えていたのだ。
だから、戦人に対し、自分にホワイトデーにお返しをする義務を与えて困らせてやろう
くらいの気持ちで彼女はチョコを用意していたのだ。
しかし、ルシファーにはお返しをもってきたのに、自分にはなかったのが、とにかくと
にかく気に入らない。
それくらいのことでどうして、と自分でも不思議になるくらい、とにかくとにかく気に
入らない。
あれだけ楽しみにしていて、布団の中で指まで折って待ち望んだホワイトデーという今
日が、急に憎らしくなる…。
「さぁさ、お出でなさい、ペンドラゴンの記念兵、シエスタ姉妹ッ!」
ベアトがケーンを振るうと、シエスタ45とシエスタ00が姿を現す。
「おや、珍しい。00が召喚されてくるとはな。」
「申し訳ありませんでありますっ。410は本日、天界選抜狙撃手交流訓練に参加してお
ります。代わりまして私めが参上いたしましたることをお許しくださいでありますっ。」
「て、天界選抜狙撃…、長いな…。それは如何様な訓練なのか。」
「はっ、はい! バレンタインデーに続き、ホワイトデーも、天界では恋愛狙撃手が大忙
しで手が足りなくなるのですっ。慣例で姉妹近衛隊から選抜狙撃手を応援に送ることにな
っております。」
「……知らなかったぞ。恋のキューピットは人手不足とな…。」
「410は優秀な狙撃手でありますので、毎年、多数のカップルを成立させると評判であ
りますっ。」
いらっ。……ベアトの表情に露骨に不快感が浮かぶ。
そしてそれを噛み潰すように、にやぁっと歯を見せて笑う。
「シエスタ姉妹、今日は狙撃が多いぞ。失敗は許さぬ、狙撃準備だッ!!」
「りょ、了解であります! 45、狙撃戦準備っ。して、大ベアトリーチェ卿。標的
は?」
「くっくくくく、多いぞ多いぞ、とにかく多い! 名付けてホワイトデー殲滅大作戦
ッ!」
かくして、その日。
平和でほのぼのしたはずのホワイトデーは、シエスタ姉妹の連続狙撃によって、次々に
打ち砕かれていったのだった…。
________________________________________
第一目標。アスモが天草からもらったばかりの小箱。
「きゃあああぁあああぁあぁッ、天草さまにもらったばっかりなのにッ! まだ中身も検
めてないのにぃいいいぃ!!」
「…た、大したもんじゃねぇさ。また買えばいい。それより、あんたに傷がないことの方
が、今は喜ぶべきだぜ?」
「………ふきゃぁぁぁぁぁぁ…、天草さま、素敵過ぎるぅううううぅぅううぅ!!」
副次目標追加。ムカつくので天草。
「失った物なんて、大した物じゃないさ。それより、ぶぎゃッ?! ぐほっ!」
「きゃああああああああ、天草さまああぁあああ、しっかりぃいいいい!!」
「ク、……クール……。…がくっ。」
第二目標。ベルゼが食べようとしている郷田のチョコフルコース。
「うわあああぁあん!! 郷田さまのベルギー修行のチョコレートぉ、頬張ろうとしたら
砕け散ったぁああぁ!!」
「そんな馬鹿なッ! 王室秘伝のレシピのはずッ、どこでどう間違えたのか…?! この
郷田、まだ未熟が過ぎるというのかぁああああぁぁぁ!! も、もう一回、ベルギーへ修
行に行ってきます!」
「しゅ、修行はいいから、もう一回作ってぇえええぇ!! うわあああぁあぁあん!」
郷田は再び、ベルギーへチョコの神秘とレシピを探りに旅に出るのだった…。
第三目標。マモンと縁寿とさくたろのお茶会で、縁寿が焼いてるホットケーキ。
「ご、ご無事ですか、縁寿さまっ、さくたろ!」
「……知らなかったわ…。ホットケーキって焼きすぎると爆発するのね。…さすが私。家
庭科が1だったのは伊達じゃないわ…。」
紅茶の香りを楽しみながら、焼きたてホットケーキでパーティをしよう。
私だって、こう見えてもお金の力だけで解決するんじゃないのよ、ホットケーキくらい
焼けるんだから。……と言って、香ばしく焼き上げている真っ最中だったのだ。
「い、いえ、ホットケーキは炭にはなっても爆発はしません…。これはまさか…、」
「…う、うりゅー。なぜか僕だけは平気ぃ…。縁寿大丈夫? マモン大丈夫…?!」
「さくたろだけ攻撃を免れたということは、……同盟の誰かの攻撃?!」
第四目標。ベルフェとウィンドゥショッピング中の留弗夫。
「る、……留弗夫ッ、だ、……大丈夫か……、」
「へっ、……どこの誰の仕業だ。悪ぃな、姉ちゃん。…どうやら俺の女と勘違いされちま
ったみてぇだな。庇えて良かったぜ。」
________________________________________
本当は狙われたのは留弗夫なのだが。それすらも庇ったかのようにすぐに摩り替えるの
が留弗夫クオリティ。
如何なる失敗も、何かを庇ったように見せ掛けてしまうテクは天下一品だ。……もちろ
ん、そういうのに耐性のないベルフェはころりと騙される。
「わ、わたわた、…私を庇ってくれたのか……。……しかし今の狙撃は、…まさかな…」
「女を庇って倒れた男は、チューすると蘇るんだけどなぁ。」
「そ、その手にはもう引っ掛からんぞ…! 今、手当てするっ。……あッ、」
第五目標。レヴィアと夫尾行中の霧江。
「大丈夫? しっかり! 傷は浅いわよ…!」
「……危なかったです…。でも、お師匠様の身代わりになれたなら、この嫉妬のレヴィア、
…く、……悔いはないです…。」
「ぷ。杭なのに悔いはない? くすくす、大げさよ。方を貸してあげるわ、病院へ行きま
しょ。」
「それよりお師匠様、早くあの浮気魔留弗夫に天誅を…! 私はここから見守っています
からっ! ほ、ほら、見て下さい! あいつ、ベルフェに、…ひいいいいい!!」
「…………病院、すぐに連れてくからね。ベッドが2つ空いてるといいんだけど。……2
4×365×67940323580435798436759847598788…」
第六目標。サタンが嘉音からもらったアロマポット。
「あッ、………そ、……そんな……。…今のは、シエスタ姉妹の狙撃ッ?! ……く、…
…くッ、…これは……、ホワイトデーに浮かれかけた私への罰なのね…。そ、そうよ。嘉
音はただのライバルじゃない。……あいつにしてはセンスがいいなんて、ちょっぴりでも
思っちゃったものだから……。…くッ、……じ、自分が悔しい、……許せないッ…! し
っかりなさいッ、私はベアトリーチェさまにお仕えする上級家具ッ、煉獄の七姉妹が一人、
憤怒のサタン!! あ、あいつの贈り物が壊されたって、……く、悔しくなんかないんだ
からッ!! ………………………くすん。」
第七目標。ルシファーに紅茶を贈った、……とかもうどうでもいいや。とにかくムカつ
くから戦人。
「ぬおぉおおおおぉおぉおお、エンドレスナイン・バリアー!! ガキーン!!」
「ひぃ! あいつ、また弾きましたッ、ニンゲンじゃない!」
「反魔法装甲を貫通できませんっ! 次なるご指示を、大ベアトリーチェ卿!」
「ってことはお前の差し金か、ベアト! どうやら、ヤケになってホワイトデーをぶっ壊
して回ってるみたいだな! いい加減にしやがれッ!!」
________________________________________
「きーっひっはっはっはっはァ!! 妾だけもらえぬホワイトデーに何の意味があろう
か! みんなみんな邪魔してやるぞ、ザマを見よ、ふーっひゃっひゃッ!! 見よ、妾の
暗躍により、打ち砕かれた無残なホワイトデーの数々を!」
ベアトーがケーンを振るうと、煙のようなスクリーンにシエスタ姉妹たちの狙撃の顛末
が次々と映し出される。
「……約1件、クソ親父については自業自得だが。それを除けば、ひでぇことをしやがる
…。この鬼畜魔女め!」
「くっひっひっひ!! 妾のホワイトデーを蔑ろにした当然の報いだッ! 妾を恐れよ、
崇めよ! 妾の怒りは七日七月七年を越えて続こうぞッ! これから毎年、バレンタイン
デーとホワイトデーは、妾の名にかけて滅茶苦茶にしてくれるわ! あっひゃっひゃひゃ
ひゃ!! ……どうだ? そろそろ謝りたくなっただろう?! ベアトさまごめんなさい、
ちゃんとホワイトデーの贈り物を用意しますゥって言ってみろよォ! そしたら特別に許
してやってもいいぜェええぇ! ただし、ルシファーに贈った物より安かったら許さねェ
けどなァあああぁあああぁ!!」
「……………アホ抜かせ。誰がお前みたいな嘘吐きわがまま魔女の言いなりになるもん
か。」
「む、……む…。」
戦人の返し言葉が、ベアトとあまりにも温度差があったので、調子が狂い、言い淀んで
しまう…。
「バレンタインもな、ホワイトデーもな。それぞれの気持ちと、心の中から湧いてくる感
情で出来てるんだよ。それを貢ぎ物か何かと勘違いしてるヤツには、何も受け取る資格は
ねぇんだ。」
「ほ、…ほぉ…。妾にはホワイトデーに貢ぎ物を受け取る資格がないと。」
「あぁ。ねぇな。お前が何をしようとしまいと。これだけは宣言してやるよ。いいや、俺
が赤で宣言してやるぜ。」
“俺は今後絶対にお前に! ホワイトデーに贈り物をしないッ!”
そう戦人が言い切る。
ベアトはニヤリと不敵な笑みを返すが、落ち着きなく下唇を噛む。
「く、ははははははは、はっははははは!! 貴様のその覚悟、よく飲み込んでおくが良
いぞ!! わははははは、きゃーっはっはっはははははは!! 妾はバレンタインを憎む、
ホワイトデーを憎むッ!! 世の中のマヌケどもよ、今日という日を忘れるな!! ホワ
イトデーなど二度と訪れるものかッ! くっひゃっひゃッ! ホワイトデーなど消えてし
まえぇええええぇえええぇええぇ!!」
________________________________________
「うわああぁああぁあぁぁぁぁん。お師匠様ぁああぁぁあぁぁ、妾もホワイトデー、贈り
物が欲しかったよォおおおぉおぉぉぉ……。」
「は、…はいはい。……またこの子は、心にもないことを瞬間湯沸かし器状態でめちゃく
ちゃにして、自己嫌悪に陥ってるわけですね? おー、よしよし…。」
「ぷっくっくっく・・・。やれやれ。先月のバレンタインの話が、よもやまだ続いておりまし
たとは。」
「そもそもはといえばロノウェが悪いッ! そなたがチョコを作ったから、妾は嘘吐き呼
ばわりされたのだぞッ!!」
「はて、それは心外な。私めはお嬢様のご命令に従い、最高のチョコをご用意したに過ぎ
ませんが? 美味しかったでしょう? カルチェラタンの香りによく合う美味しさだった
でしょう?」
「う、うむ。美味しかった。カリカリこりこり行けてしまった。」
「では私めのせいではありませんなぁ。一方的にお嬢様が悪いかと。」
「……そうですよ。どうしてロノウェのせいになるのですか。」
「じゃ、じゃあじゃあ、ルシファーが悪いぃ! あいつがロノウェのチョコを自分の手作
りだと言って戦人に渡したから私が嘘吐き呼ばわりされたー!!」
「ぷっくく! 手作りと偽ったのはお嬢様も一緒ではありませんか。」
「ルシファーは悪くありません。あなたのために普段から一生懸命尽くしてくれる家具で
すよ。粗末にしたら怒ります。えぇ、本気でです。」
「……う、……うう…。…じゃ、…じゃあ。ロノウェも悪くなくて、ルシファーも悪くな
いなら、……戦人が悪い?」
「………こ、この子はまったく。……いいですか。そもそもは戦人くんの言うとおり、あ
なたがホワイトデーを、貢ぎ物をもらえる日などと勘違いしているからいけないので
す。」
「たとえ義理チョコなれど、男女の甘酸っぱさを楽しもうという、風雅な気持ちがなくて
はなりません。…バレンタインにチョコを押し付ければ、ホワイトデーに返礼を強要でき
るという考え方は、エレガントとは申せませんな。」
「…う、……うぅぅぅ…。」
ワルギリアとロノウェに、二人掛かりで怒られては、さしものベアトも言い返せない。
しかし、納得できない気持ちがあるらしく、下唇はまだ噛み続けている。瞳に留まる涙
は熱かった…。
________________________________________
「……正直に仰いなさいな。本当は寂しかったんでしょう?」
「ぅ……。…うわぁああああぁあぁぁぁぁん!! 妾もホワイトデーに贈り物が欲しかっ
たぁぁぁ! なのに、七姉妹たちばっかりずるいずるい! ルシファーは戦人から紅茶も
らえたのに、妾には何もないなんて…、……これからも未来永劫、何もないなんて、やだ
ぁ、つまんない、……そんなのやだよぉおおお、うわぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁ……。」
泣きながらワルギリアのドレスに顔を埋めるベアト。
その様子に、ワルギリアとロノウェは顔を見合わせ、溜息を漏らす。
「良いですか、ベアトリーチェ。もしも戦人くんからホワイトデーにお返しが欲しかった
なら。バレンタインデーに、戦人くんに心の篭ったチョコを贈るべきでした。下手くそで
も構わない。それでも作るのが無理ならば、お店に行って、どれが相応しいか真剣に悩む
のもいい。とにかく、彼に喜んでもらおうという気持ちが必要だったのです。」
「そしたら、戦人は妾にもホワイトデー、お返しをくれる……?」
「あなたの気持ちがちゃんと伝われば、ですよ。」
「手作りチョコも、私のようなプロフェッショナルに相応しいレシピから、カッコ笑いが
付いちゃうような超スウィーツ(笑)のお嬢様でもそこそこ格好が付く、ヌルヌルビギナ
ーレシピまで色々ございます。チョコに心を込めるのは、難しいことではありません
よ。」
「………来年のバレンタインに…、妾が手作りチョコを作れば、……戦人も機嫌を直して
くれる…? 来年まで待つの…? 来年まで戦人、妾をあんな冷たい目で見てるの…?
……そんなのやだよぉ……。」
はぁっと、ワルギリアは苦笑いの溜息を漏らす。
しかし、ようやく素直になってきた。ベアトは時間をゆっくり掛けて心を解きほぐしさ
えすれば、ちゃんと素直になれる子なのだから。
「では、ベアトリーチェ。こうしましょう。……私の持つ最大の秘術で、時間をバレンタ
インの前日に戻してあげましょう。」
「……え、…ええぇッ?! そ、そんなすごい魔法、あ、あるのか?!」
「時間逆行ですか…。……まさかそのような大秘術をマダムがお使いになれたとは。…い
えいえ、マダムだからこそでしょう。あなたには、今なお驚かされ続けます…。」
大悪魔のロノウェをして驚く大秘術。時間逆行。
その魔法によって、ベアトはバレンタインデーの前日に戻り、今度こそ手作りチョコを
作って、戦人にプレゼントする…。
「生涯において何度も使える術ではありません。それを使うのです。この機会を疎かにし
てはなりませんよ…?」
「う、……うむっ。わかっている…。」
________________________________________
「あなたはこれより時間を遡りますが、時の激流に常に逆らい続けるのです。あなたにわ
ずかほどの油断があれば、すぐにでも術は解けてしまいますからね。気をつけるのです
よ。」
「わ、わかった。油断しない。」
「秘術は私が使いますが、それを維持する魔力は、過去の世界に存在するあなただけで賄
わなければなりません。つまり、あなたにも、大秘術に等しいだけの集中が必要だという
ことです。」
「わかっているっ。して、その集中というのは?」
「疑わないことです。ここが過去の世界であることを疑えば、たちまちのうちに術は解け
てしまいますよ。魔法の基本です。信ずる心なくして、如何なる魔法の成就もありえな
い。」
「わ、……わかった。」
「それではベアトリーチェ。いってらっしゃい、バレンタインデーの前日へ。今度は真面
目に、そして素直になるんですよ?」
ワルギリアがパチンと指を鳴らすと、ベアトは黄金の蝶の群に変えられ、厨房に運ばれ
ていく……。
それを見送るワルギリアとロノウェ……。
「しかし、時間逆行とは……。なかなか面倒な秘術をお使いになりますね。」
「……えぇ、とても面倒な秘術です。この秘術は術者一人では、とてもとても扱いきれま
せん。」
「わかっております。ささやかながら微力いたしますよ。」
「関係者全員に、今日はバレンタインデー前日だと言い含めるように。カレンダーや新聞、
テレビにも注意ですよ?」
「えぇ、心得ております、マダム。お任せを…!」
「あなたたちも聞いていましたね?」
「「「「「「「はい、先代さま!!」」」」」」」
かくして。
すべての関係者に、今日はバレンタインデーの前日であるという口裏合わせがなされた。
知らぬのはベアトだけだ。
厨房で意識を取り戻したベアトは、ごそごそとレシピ本を漁る。
すると都合のよいことに、カンタン!と書かれた付箋が何本か貼ってあって、初心者で
も作れそうなチョコを紹介していた。(もちろんこれはロノウェの手回しだ)
「……妾が本気を出すからには、こんなカンタンなものではだめだッ! 妾はやれば出来
る子というところを見せてやろうぞッ!」
________________________________________
…と、勝手に意気込み、ベアトはせっかくの付箋を無視して、見栄えの良い難易度の高
いレシピに挑戦する…。
「何しろ、ロノウェに作れたのだ。そのロノウェを使役する妾に出来ない論法があろう
か? 妾を本気にさせたこと、皆、後悔すると良いぞ! ふっはっはははははは!」
……やれやれ。その様子を魔法の三面鏡でうかがうワルギリアたちは、何度目になるか
もわからない溜息を漏らすのだった…。
それからの半日は、……料理界に衝撃とスペクタクルを与える出来事の連続だった。
チョコを湯せんするだけで、釜を破裂させてみたり。チョコが焦げたり破裂したり粉に
なってしまったりは可愛い方だ。
挙句には、チョコに足が生えて厨房中を駆け回ってみたり、羽が生えて飛び去ってしま
いそうになったり。ベアトのチョコ作りの道具の中に虫取り網まで追加される始末。
その様子はどう見ても、もはやチョコ作りからは逸脱していた…。
しかし、度重なる失敗で厨房をチョコ塗れにしたせいか、甘いチョコの香りが漂い、彼
女が何を成そうとしているのか、常に忘れさせないようにしてくれた。
「こんなにも苦労して作ってるんだから、妾の気持ちはたっぷりだよなぁ。こんなチョコ
を受け取ってしまったら、戦人め。ホワイトデーのお返しは大変なことになってしまうぞ。
きっひっひ…!」
そう笑いながら鍋をかき混ぜるベアトの脳裏に、お師匠様の言葉が蘇る。
”ホワイトデーも、貢ぎ物がもらえる日などと勘違いしてはなりませんよ。”
……そ、そうだそうだ。せっかくお師匠様の秘術でもらった、大切な機会ではないか。
今はそんな不埒なことを考えてはいけない。考えてしまったら、そのせいで術が解けて
しまうかもしれないのだから。
ベアトは、バレンタイン前日を示す日めくりカレンダーを見上げ、それが元の日にちに
スゥッと戻ることを想像して、頭をブルブルと横に振ってから、再びテンパリングに没頭
した…。
「……あら、すっごいいい匂い。ベアトがお菓子作りに挑戦するなんてね。いよいよハル
マゲドンも近いのかしら。」
「その声は…! ガァプかっ。」
がちゃりと冷蔵庫が空いて、その中からガァプが姿を現す。
もちろん冷蔵庫の中に潜んでいたわけではない。ワープポータルを使い、冷蔵庫の扉か
ら現れたのだ。
________________________________________
友人の前に唐突に現れるのは失礼。可能な限り、扉を経て現れるべきであるというのが、
彼女のささやかな美学のようだった。
「おかしなタイミングで遊びに来ちゃったかしら。忙しかった?」
「構わぬぞ。よい試食の生贄がやって来たっ。」
「……チョコ作りの過程で、どうやったら厨房がこうも荒れ果てるかを説明してくれたら
考えるわ…。」
さすがのガァプも、この有様には呆然とする。
いや、それよりも、なぜベアトがこんなことをしているのかの方が気になった。
「ねぇ、ベアト。……あなたどうしてチョコなんか作ってるの?」
「もちろん、バレンタインデーのためであろうがっ。明日のバレンタインに備えてだ
な、」
「……………。…今日、ホワイトデーよ?」
「…………。」
……ベアトの手が、ぴたりと止まる。
そのちょっとだけ凍った空気に、ガァプには察しようもないが、何かの事情があるらし
いことを汲み取る。
しかし、今さら慌てて言い繕っても、どうしようもない。
「……ごめんなさい。余計なこと言っちゃったかしら…? ………忙しいようね。私、今
日はこれで失礼するわ。…またね。」
ベアトは応えない。
ガァプは床に黒いワープポータルを開くと、何も言わずに飛び込んで姿を消す。
…後には、時を止めてしまったかのように呆然とするベアトだけが残された…。
………やっぱり、……そうじゃないかなァって、……思ってたんだよなァ…。
だって、時間を逆行させるなんて大魔法、…いくらお師匠様だって、指を弾くだけで出
来るわけがない……。
「……ぐすり………、っ……。」
塩辛い鼻をすする。
涙が一粒、チョコを溶かしたボゥルに落ちた。
……もう、何だかすごい馬鹿らしくなって、……すごい自分が馬鹿で馬鹿で……。
誰にも怒りはわかなかった。…でも、こんな幼稚な嘘を真に受けた自分が、何よりも馬
鹿馬鹿しくて、……自分で自分が悔しかった…。
________________________________________
丹念に丹念に。
愚直に愚直に。
丁寧に丁寧に。
…そうやって作ったら、やっとチョコらしき物に近づいてくるという手応えを、ようや
く得たのに。
……もうどうでも良過ぎる。悲しくて馬鹿馬鹿し過ぎる。
捨てちゃえ、こんなの。ボゥルを両手でぎゅっと掴む。
……数時間に及ぶ、…あるいはたった数時間の、…自己への贖罪が詰まったボゥル。
投げ出せ…、…ない。
もう、涙をそれ以上、堪えることが出来なかった…。
バレンタインとか、ホワイトデーとか。
……妾は、何を楽しみにしてたのかなァ……。
恋愛感情とかは別にない。
でも、………何かこう、………花冷えの初春が終わって、ようやく空気が温んでくる頃
の陽気のような。
……そういうものが、妾も一緒に感じたくて。
別に、……貢ぎ物なんか、……どうでも良かった……。
「……ううぅ、……ぐすっ……! これが、……本当の、……バレンタインの前日だった
らなァ……。……どうして今日は……、3月の14日なの……?」
全部遅い。
もっともっと。……バレンタインとホワイトデーの二つの不思議な日を、楽しもうとい
う気持ちを持てていたら…。
カレンダーは、…ロノウェ辺りが細工したのだろう。数学上は、2月13日となってい
る。
でもそれは嘘なのだ。
「このカレンダーのとおり、………本当に今日が2月13日だったらなァ……。」
「2月13日じゃねぇんなら、今日は一体、何月何日なんだよ。」
「ばっ、……とら……。」
魔女の厨房に、戦人がどうやって迷い込んできたのか…。
しかしそれを問う必要はなかった。彼が勝手に応えたからだ。
________________________________________
「チョコっぽいような、そうでないようなおかしな匂いがするからと、来てみれば。まっ
たく、おかしなモノを見ちまったぜ。まっさか、ベアトともあろう魔女が、甲斐甲斐しく
明日に備えてチョコを手作りしてるなんてなぁ?」
「……………。」
「……誰にあげるつもりだかよ。ま、それが俺じゃねーことを祈るぜ…。」
……戦人の演技は、ちょっぴり下手だった。
もっともっとうまかったら。ベアトの傷心を少しは癒せたかも。
しかし、演技であることがバレバレで、かえってベアトを苦笑いさせるだけだった…。
…わかってる。
お師匠様かロノウェ辺りが、戦人にも私の情けない事情を話し、協力を求めたのだろう。
情けない……。情けない……。
天下の大魔女、黄金のベアトリーチェが、……情けない……。
「…………っ、………と……」
…当の戦人も、やはり自分の演技が下手だったかと認めつつあった。
やはり、こんな単純な嘘や演技では、騙し続けられたわけもない…。
せめて戦人に出来るのは、…安っぽい言葉を無理に掛けず、沈黙する方がかえって傷つ
けないと、気付くことだけだった。
もう、こんな茶番、おしまいにしよう。ベアトは、この張り詰めた空気を終わらせルこ
との出来るのは、自分だけだと気付く。
…いつものように、下品に笑い転げて戦人を罵倒すれば、それで全部元通り。……ある
いは、元通りにぐちゃぐちゃのしっちゃかめっちゃか。
その時、………お師匠様の言葉が、最後にもう一度蘇る…。
”疑わないことです。ここが過去の世界であることを疑えば、たちまちのうちに術は解け
てしまいますよ。魔法の基本です。信ずる心なくして、如何なる魔法の成就もありえな
い”
「……そう、……だよな……。……ぐすっ……。」
妾は、……どんな大魔法だって自由に使いこなす大魔女じゃないか…。
魔女なら魔法、………使いこなして、……見せなくちゃ……。
「う、……うむ…っ」
「……ん?」
________________________________________
「そうだ、よくわかったなッ。明日のバレンタインのために、妾はチョコを作っているの
だっ。」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃのくせに、………憑き物が落ちたかのような、不思議な笑顔を
していた。
「妾の手作りチョコなど贈られたら、……きっとそいつは驚くぞォ!」
「そ、そりゃあ驚くだろうぜ。中に何が入ってるやら。おっかなくて食えたもんじゃない
だろうぜ。」
「失敬な。これは正真正銘、普通のバレンタインチョコである! 世の男どもが、年にた
った一度、労せず女からチョコをもらえる奇っ怪な祭りの日ではないか。その祭りを、妾
も混ぜてもらおうと思ってなっ。」
「へっ。こんな時ばかり、女の子っぽい真似を始めやがって。」
不思議だった。言えば言うほど、……戦人の言葉から嘘っぽさがなくなっていく。
そして、……本当に今日は、2月13日なんじゃないかという気がしてきた…。
「こんなチョコ受け取っちまったらその男、ホワイトデーにお返し、してくれちゃうかな
ァ…。」
「するだろ。きっとな。」
「…そいつ、赤き真実で。ホワイトデーにはお返ししないって言ったぜェ…? だからお
返しは出来なェだろうなァ…。」
「いいや。…出来るだろ。」
「どうやって。」
「そいつは、青き真実で語るぜ。つまりはこういうことだろ?」
“ホワイトデーはバレンタインの一ヵ月後にある。ということは、明日、お前のバレンタ
インチョコを受け取った男は、明日の一ヵ月後にお返しをすれば、それはお返しと認めら
れるってわけだ。”
「明日なんだろ? バレンタイン。」
「う、……うむっ。」
「じゃあ、お返しがあるならその一ヶ月後だな。しかし、どういうわけかその一ヵ月後が、
ホワイトデーでない日だったなら。お前のチョコに、そいつは赤の矛盾なくお返しが出来
るって寸法になるなぁ。」
「……ふっ、相変わらずの屁理屈男め…。お、お前と長々とおしゃべりをしていたから、
見ろ! テンパリングがまた失敗だ! またまた湯せんからやり直しだ! お前も手伝え、
妾はもう手首がクタクタだぞ!」
「い、威張るなよ。俺に手伝えってんだろ? ……ちぇ、今日だけはちょいと付き合って
やるぜ。」
________________________________________
ぱたん。
何の音かなと思い、音のした方向を見ると、そこには冷蔵庫が。
じゃあ、今の音は冷蔵庫の閉まる音……?
「ど、……どうした。急に顔を真っ赤にして。何かドジったか、俺。」
「なっ、何でもないッ! ほら、きりきり茹でろ、きりきり溶かせ! あーもう面倒だッ、
お前にチョコを塗りたくってオーブンに放り込んでしまおうかッ!」
[/sp]
右代宮戦人@2009-08-02 13:31
七姐妹情人节...直接拉到贝熊那里...贝熊你好可爱:p
意外的长啊...汉化加油了:D
wjn6347xjs@2009-08-02 17:56
借地问一下
这张有没有翻译过的版本
右代宮戦人@2009-08-02 18:09
引用
最初由 wjn6347xjs 发布
借地问一下
这张有没有翻译过的版本
[IMG]http://i349.photobucket.com/albums/q386/wangwei19891113/1247759925017.jpg[IMG]
我没见过...
推倒贵@2009-08-02 18:11
引用
最初由 右代宮戦人 发布
我没见过...
喂喂,你qm最后一张有没有全图?
右代宫夏妃@2009-08-02 18:15
引用
最初由 wjn6347xjs 发布
借地问一下
这张有没有翻译过的版本
有,去米乐魔王的blog
引用
最初由 右代宫嘉音 发布
贝熊的白色情人节
[/sp]
感谢分享!
右代宮戦人@2009-08-02 18:19
引用
最初由 推倒贵 发布
喂喂,你qm最后一张有没有全图?
什么全图啊
推倒贵@2009-08-02 18:21
引用
最初由 右代宮戦人 发布
什么全图啊
人妻战队那张,每次只能刷出半身……
原来是机子RP了……:rolleyes:
右代宮戦人@2009-08-02 18:23
引用
最初由 推倒贵 发布
人妻战队那张,每次只能刷出半身……
你RP不行啊...我试了试,没问题...
wjn6347xjs@2009-08-02 18:34
引用
最初由 右代宫夏妃 发布
有,去米乐魔王的blog
谢谢太太:o
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