http://www.shinchosha.co.jp/yomyom/info.html 神社のご利益
ここ数日、朝晩は涼しく秋の気配も漂ってきましたが、この先三ヶ月の長期予報によると、まだまだ残暑は厳しいとか。本格的な秋の訪れはもう少し先かも知れません。強い日差しの中を歩いていると、木立や街路樹が作る木陰はありがたく、足は自然とそちらに向いていることがあります。
以前、ある神宮の権禰宜さんからこんな話を伺いました。いろいろ説はあるだろうけれど、「けがれ」とは不浄という意よりも、「気枯れ」、つまり「気」が枯れる状態のことを言う。人間が本来持っている「気」が枯れると、体調やら精神の状態やらが悪くなる。だから、「けがれ」た時には鎮守の森に囲まれ、「気」の満ちた神社を詣でれば、その「気」が回復するんですよ、と。
幾歳月を経たご神木や、杉木立に守られた空間には、確かに清らかな力があるように感じられ、以来、神社に詣でると大きく息を吸って良い「気」をいっぱい取り入れるようにしています。
そんな神社の中でも〈最強〉なのが伊勢神宮でしょうか。伊勢神宮では20年に一度、正殿をはじめ建物、さらに御装束や神宝を造り替え、御神体を新宮に遷す式年遷宮が行われますが、2013年に迎える遷宮を記念して東京国立博物館で「伊勢神宮と神々の美術」展が開かれています(9月6日まで)。「古事記」「日本書紀」などの古文書をはじめ貴重な展示物が並べられているのですが、1300年にわたり、御装束や神宝といった工芸品を作る技術が継承されていることに、何より驚きました。一昨年、御用材を曳きいれる〈御木曳行事〉を伊勢に見に行く機会を得たのですが、遷宮のための様々な伝統行事をこの機会にご覧になってはいかがでしょう。
「yom yom」でも、伊勢を彷彿とさせる架空の土地を舞台とした、恩田陸さんの小説「青葉闇迷路」を掲載しています。登場人物たちそれぞれが秘密を抱えるミステリアスな物語で、さらにその土地と人との不思議な関係も描かれていますが、この地ならこんなこともあるやも、と思わせる何かがあるような気がします。物語の名手が紡ぐ小説をぜひお楽しみ下さい。
また9月26日発売の12号では、ファン待望、小野不由美さんの新作も掲載されます。人気シリーズ「十二国記」の新作です。発売までもうしばらくお待ち下さい。
「yom yom」編集長 木村由花
2009/09/01