週刊SPAPA・只野雅之さんの、2000年8月発行『私が愛した外科医』A4・36P
週刊SPAPA・只野雅之さんの、2000年12月発行『孤高も慈愛も幾歳月5』B5・20P
最强的是这种
本書では手塚治虫の名作コミック『ブラック・ジャック』を「症例カルテ」「架空症例対談」「オマージュ」の3章から分析しているが、その分析はすべて現役の医師によって行われている。いわゆる「データ本」が多く出版されているなか、この本では、多くのプロフェッショナルの視線から、ブラック・ジャックの仕事を実務ベースで評価している点で異彩を放っている。
なかでも圧巻は、本書の大半を占める「症例カルテ」である。『Black Jack』中で行われた36の手術を、「心臓外科」「内科」など、科ごとに分類し、それぞれの症例を「評価」「評価理由」「私ならこうする」といった項目により、現代医学の観点から真剣に検討している。いきなりの開腹やメンタルケアなどが批判されたりと各医師の批評は本職ゆえに辛辣だが、一方でユニークな術式に対する賛辞があったりもして、彼らが子どものころ愛読した作品への敬愛を感じ取ることができる。
第3章の「オマージュ」中の「ピノコ生きてる!」では、奇形嚢腫(のうしゅ)から生まれる、ということがどういうことなのかを緻密に分析し、「ピノコは重度の視力障害者である!」「ピノコは食道発声で話している!」など、ファンには驚きの事実も明かされる。
現代医学の進歩や、医師たちの病気に対する考え方を知る一方で、リアリティーを多少損なっても手塚治が伝えたかったことが見えてくる。ぜひ原作コミックスと併読することをおすすめしたい。
目次
第1部 症例カルテ(心臓外科
内科
整形外科 ほか)
第2部 架空症例対談 長島公之×小野博正(人間鳥
ナダレ
木の芽 ほか)
第3部 オマージュ(B・Jへのオマージュ
ブラック・ジャックへの「反」オマージュ
ピノコ生きてる―その真実と苦悩)