傘の花が咲く街に、今日もオレは繰り出してゆく。アテはない。楽しければそれで良い。もう普通の学生になったのだから、誰もがそうしているように当たり前の学生時代を謳歌する。これからがオレの本当の青春だと、足下を見つめながら。
こんなオレにも夢があった。
オレにはバスケしかなかったから、だからその唯一で頂点を目指す。しかしその全てが絶たれたあの日から、オレはごく普通の学生となった。目指す物がなく、しかしいつまでも心に未練を持ち合わせたまま。
――バスケを失って迎える初めての夏が、雨に煙る雲間の向こう側から顔を覗かせていた。