交換ソフト「Winny」開発の東大助手を逮捕
発信源などの特定が困難なファイル交換ソフト「Winny」を開発し、インターネットを通じて映画やゲームソフトを違法コピーするのを容易にしたとして、京都府警ハイテク犯罪対策室は10日、東京都文京区根津、東京大大学院情報理工学系研究科助手金子勇容疑者(33)を著作権法違反(公衆送信権の侵害)ほう助の疑いで逮捕、自宅など数か所を捜索した。
同容疑者は容疑を認めている。ファイル交換ソフトについては関連業界が問題視し、違法性が指摘されていたが、ソフト開発者を同法違反のほう助に問うのは国内初。
Winnyは、ネット上で無料公開されているソフトで、他のパソコン本体に収められた音楽や映画などのデジタルデータをネットを介したパソコン同士で送受信できる。
調べでは、金子容疑者は2002年5月ごろ、従来の交換ソフトより匿名性を高めようとWinnyを開発し、自分のホームページ上で無料公開。昨年9月、群馬県高崎市の男性らがWinnyを使い、米映画などをネット上で公開するのを手助けした疑い。
金子容疑者は、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」で、「そろそろ匿名性を実現できるファイル共有ソフトが出てきて、現在の著作権に関する概念を変えざるを得なくなるはず。試しに自分でその流れを後押ししてみよう」などと、開発理由を説明していた。
府警は昨年11月、高崎市の男性と、Winnyを使ってゲームソフトをネット上で公開した松山市内の無職少年を同法違反(公衆送信権の侵害)容疑で逮捕。関連先として、金子容疑者の自宅も捜索していた。
Winnyの利用者は全国で数十万人に上るとみられ、最近はWinny利用者がパソコンに保存したデータがすべて流出するコンピューターウイルス感染も拡大。府警は、金子容疑者がWinnyを236回も改良して公開していたことや開発の意図をネット上に記載したことなどを重視し、逮捕に踏み切った。
◆ウィニー=ファイル交換ソフトの一つ。インターネットに接続した状態で、入手したいファイル名の一部を入力すると、他のウィニー利用者のパソコン内を自動的に探してダウンロードする。誰がファイルを流したかが分かりにくい仕組みになっている。
著作権法では、市販のゲームソフトや映画などの著作物を個人で楽しむ目的でコピーすることは認められているが、コピーを送信できる状態に置くことを禁じており、こうしたコピーソフトなどもウィニーで交換されている。(読売新聞)