ガンダム30周年の年を迎えて『機動戦士ガンダム』原作・監督 富野 由悠季
2009年 1月 1日 皆様方がいらっしゃったおかげで、今年、『機動戦士ガンダム』は、30周年をむかえることができました。本当にありがとうございます。
巨大ロボット物というジャンルの作品タイトルが、このような歳月を過ごすことになるとは思ってもいませんでしたから、嬉しいかぎりです。
なぜこのようになれたのか、ということは、嫌でも考える時間をいただきましたから、解答を得たかったのですが、いまだその理由はわかりません。ニュータイプではありませんから……。
とはいえ、世代をこえ、性別をこえてお認めいただけ、楽しんでいただける要素がはいっているタイトルであり、誰がはいってきてもよいだけの何かがあったのではないかと想像いたします。
しかし、そのような素地があったにしても、それは、あの時、あのようなスタッフがいて、皆様方ひとりびとりの視聴者、読者がいたからだという以外の言葉をもてません。
とはいえ、核になるものがなければ生まれ得なかったのだとすれば、当事者として、ひとつだけ志したことがあると思い出せます。それは、巨大ロボット物というジャンルからでも、全方位的に発言しうるなにかを含有させることはできるのではないか、というアニメ屋の勘がはたらいていたということです。それを野心といわれてしまえば、赤面の至りですが、そのような漠然とした志だけはあったつもりです。
そして、これからの30年にむかっては、流れていく時間にのってゆける志をもってことにあたれば、時代は拓かれるということです。
そのためのマイルストーンとしてのこの年、という位置づけをすることによって、さらなる芸能、さらなる世界観の構築、なによりも、万人が楽しめる作品を手作りしていく世代へのバトンタッチ・ゾーンになって欲しいと願うのです。
今後とも、よろしくご指導ご鞭撻のほど、お願い申し上げます。