http://bbs.fxdm.net/showthread.php?t=95437「ふ~~~いい湯だぜ~~~」
銭湯でひとっ風呂浴びる吉田山。
「今年の垢は今年のうちに落とさねーとな。思えば色々あったぜ。体育祭じゃあの播磨のせいで負けちまったが、
その分文化祭じゃ水着相撲に演劇とひっぱりだこ!!人気者はつれぇぜ全く」
風呂から上がり、意気洋々と夜道を引き上げる吉田山。
「けどここで満足はできねえ、来年こそはビックな男になるぜ!」
「まずは播磨さん…いや播磨を舎弟にして、憧れの沢近さんの前でコキ使ってやるぜ!」
キシシシと笑う吉田山の後ろに迫る黒い影。
「…お嬢サマ。エリお嬢サマ」
「あ゛っ!?」
振り返った先にいたのは巨大なおっさんメイド、スズキマサル。
「え……」
「ム゛ッ……お嬢サマじゃない…」
「まぎらわしいゾ」
ゴッ
「はひゃっ」
「…シバラク、ソウしていろ」
何故か電柱に縛り付けて放置される吉田山…
「お嬢様?ああお嬢のことか、あいつなら今奥に…」
一方、周防工務店にて応対していた播磨、そこに美琴から声が掛かる。
「オーイッ!!播…いや従業員!」
「ん…?」
コイコイと手招きしつつ、
「すんませ~ん、コイツ新入りなもんで失礼を……」
と断わりながら播磨を物陰に誘い出し、まくし立てる周防。
「何だよ!」
「何だよじゃねーよ!見ただろ沢近の様子・・・ありゃどーみても・・・あ~~っ!でも私が口を挟むのもな…」
「何言ってんだ?」
「美琴」
「あっ………!」
「ナカムラが来てるみたいね、イキナリで悪いんだけど、そろそろ…お暇しないと」
「え…でも…」
「まあ美琴が言いたいことも分かるけど、さっきも言ったでしょ、大丈夫よこの見合いは断わると決めてるんだから……」
笑顔で話す沢近をみてショボーンとなる周防だが、
「じゃあ…ありがとね。ご飯美味しかったわ」
と言って別れようとした沢近の目を見て我慢できなくなる。
「だーーーっもうっ!!」
「キャッ!!」
「お前ちょっと来い!!」
「え…!?な、何…!?」
沢近の手を取り強引に用務員控え室らしき部屋に連れ出す周防。
「ホラ服脱げっ!!」
「な、ちょっとエッチ!」
「いーからホレ!これ着ろ!!」
「もーーっ何なのよっ!?」
「な…これ作業着?」
作業着に着替えた沢近に播磨を引っ張ってくる周防。
「いーから沢近!コイツを貸してやっからさ、とりあえずウチのバイクでここを出な!んで少し外で頭冷やして来い!!」
「「はあっ!?」」
慌てて周防に詰め寄る播磨。
(ちょ、どーゆーことだよ周防!?俺にゃ仕事が…!!)
(いーんだヨ!!アンタは今周防組の従業員だろ!!業務命令だ!)
(う゛っ…!!)
「頼んだよ!!」
舌打ちしつつもバイクを噴かす播磨と後ろに跨る沢近。
振り返った沢近に、
「なーに後は任しとけ。それじゃまたな!!」
と親指を突き立てる周防、二人が遠ざかるのを見送った後、
「あ、すいません今お手洗いに行ってて」
とナカムラの元に向かう。ナカムラは
「かしこまりました」
と受けつつ、
「マサルめ…なぜ出ない?」
と電話を握りしめる。
そのころマサルはある人物を発見する。
「八雲殿、拙者寿司が所望じゃ」
「えっ今日はお鍋を…」
買い物袋片手に二人で肩を並べて帰る塚本姉妹。
「……………」
マサルは後ろから天満のピコピコを凝視していた。
「もう…じゃあ荷物置いてくるから、ちょっと待っててね」
門の前で天満の荷物を受け取り一度自宅に戻る八雲。
「感謝致す。この恩は忘れぬぞ!」
と時代劇のノリで機嫌よく見送る天満。手を振る彼女の後ろで妖しく目が光る…
「姉さんお待たせ」
扉を開けた八雲だが、
「あれ…いない…」
「姉さんたらもう……せっかちだなあ」
その頃、播磨は不機嫌にバイクを飛ばしていた。
(くそっ!とんでもねぇことになっちまった。毎度のことだが…一刻も早く原稿を仕上げにゃならんっつーのに!!)
「あの…どこに向かってるんですか?」
「は?いや…俺も知らねっすよ」
「本当にごめんなさい、私のせいでわざわざこんな…」
(ああ全くだぜ!!)
「…でも良いンスか?見合いとか言ってたけど?」
何気なく聞いた些細な一言だった。
「…………」
「…本当は」
「本当は…行けば無理にでも婚約させられていたでしょう。私の親はそういう人ですから…」
(何だと?コイツ……)
(本当は断わるつもりじゃなかったのか
(でも……何故?)
(諦めてたわ……心のどこかで………)
(でも私間違えてたのかしら…?弱かったのかしら……?)
(分からない……でも、今私の前には……)
暗闇の中、
バイクのテールランプに大きく尾を引かせ、
山道に入り、
流れる星や風景を眺め、
ふと見かけた対向車には、
何故かマサルと笑顔の天満が乗っていた。
「へ?」
「……!?」
慌てて振り返る二人の目には、やはりポワワンと笑顔浮かべる天満の姿が…
「ちょ…ええっ!?」
(い、今のは天満ちゃん!?)
「な、何やってんのよ天満!しかも一緒にいたのはウチの…と、と、と、とにかくメールよ!」
「あ、返ってきたわ」
From 天満
Subject Re:ちょっと!
やっほ~!
なに今見てたの?
うん、実はね、これから
お見合いに行くんだ!
えへへ、いーでしょー★
だから安心してね!
もうノリノリ…
―中略―
じゃあね~~
ばいばーい!!
天満&マサル
(ええっ…?ええええっ!?一体どーいう…)
(…まさかあのバカ!!全然似てないじゃない!!)
「どーしたんスか?」
「そ、それが何故か私の友達がウチのメイドに連れてかれちゃって…もーーーなんでこんなことに!!」
ギラッと播磨の目が光る。
「すぐ乗ってくだせえ!!」
「え…?」
ぐいっと手を掴みバイクに乗せようとする播磨。
「決まってんでしょ。俺がそんな見合いブッ壊してやりますヨ」
逆光の中決める播磨にちょっと見ほれる沢近。
(やだ何でこの人こんなに一生懸命に…)
(天満ちゃんが見合いなんて俺が許さん!!)
ちょっと頬を染める沢近を後ろに乗せ、青筋浮かせまくりの播磨がバイクを発進させる。
「だ~か~ら~私はエリちゃんじゃなくて天満ダヨ♥」
「………ムッ、メンマ?」
おとぼけコンビの車内会話で締め。
#151…Fin.