「ああ。だから今日は、ぱーっと遊びに行こうぜ?」
「えっ……?」
意表を衝《つ》かれたように、俺に向き直る麻奈実。眼鏡の奥で、円《つぶ》らな瞳をぱちくりさ
せている。
「これから二人《ふたり》で、気晴らしに遊びに行こうっつってんだけど? イヤだったか?」
「う、ううんっ。ぜ、ぜんぜんっ、イヤじゃないよっ」
麻奈実《まなみ》はブンブン首を横に振った。落ち着けって、飼い主を出迎える子犬みてえなやつ
だな。
「そか。じゃ、おまえ、どっか行きたいとこあるか? なんだったらとなり町まで出でもいいし……
いま、なんか映画とかやってたっけ?」
「う、うーん」
せわしなく眼鏡《めがね》の位置を整《ととの》えながら、考え込む麻奈実。まあじっくり考えて
くれや。
一方、俺《おれ》は財布《さいふ》の中身を思い出しながら、『この際、空《から》にしちゃっても
いいだろ』という気になっていた。たまには世話になっている幼馴染《おさななじ》みに、おごって
やるのも悪くない。
勘違《かんちが》いして欲しくないから言っておくが、あくまで俺のためだかんな?
このゆるいのとくっ喋《しゃべ》っていりやあ、多少は疲れも取れんだろ――ってわけ。
「ど、どこでもいいの?」
「おう。――どんと来い」
「それじゃ――遠慮《えんりょ》なく言うね?」
麻奈実は、ゆるゆるの笑顔《えがお》で、こう提案した。
「中央公園がいいなあ」
「……一分の迷いもなく、選択肢《せんたくし》の中で一番地味なところを選びやがったな? 『ど
こでもいいの?』 って前振りしといてそこなのかよ……」
せっかくおごってやる気になってたんだから、そこはわがまま言っとけよ……。
「え、えー? なんで怒ってるの……? どこでもいいって言ったじゃない」
などと口を尖《とが》らせる麻奈美。そりゃ言ったけどさ……つたく、昨日《きのう》のオタク三
人衆とのギッャプが凄《すご》すぎるわ。昨日、俺が同じ台詞《せりふ》言ってたら、間違いなく毟
《むし》り取られてたね。
「ま、いいや。せめて飲み物かなんかおごってやんよ」
「わ、ありがと。……それなら、お茶がいいかなあ。あったかいの」
「はいはい、いつものな。ホットなぁ……もう春も終わるってのに、売ってんのか……?」
ほんっと……金のかからないやつだな。
どうしておまえは、たった百二十円で、そんな幸せそうな笑顔を浮かべられるんだ。
啊嗚嗚~~麻乃實真是好女孩!!
好吧請自動無視我…純粹只是感慨一下。。