小说第9卷最后 龙虎2人一起去私奔了...
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……
涙も止まらなかった。
口から出た言葉は、取り返しがつかない。泰子が頭を抱えて座り込む。おかしいほどに全身が震え、泰子に駆け寄ることなんかできるわけがなかった。
ただ、たった一つ。
この世にいることそのものが、そもそも聞違いだったのだと。悪だったのだと。
キラキラと輝くような日々が、今日までの幸せが、笑ったり泣いたりしたことが、友達の顔が、悩んだことや、わかってきたこと、その全部が――あっという間に手の中をすり抜けてい
く。竜児の中から、零れ落ちていく。一瞬にして、砕け散っていくのがわかる。
「竜児」
左手をきつく掴まれて、竜児は見た。
「……大河」
大河の母親は、取り乱した泰子の様子に気を取られていた。竜児も、大河の右手をきつく握り締めた。ゆっくりと足を動かし、そして一気に二人は走り出した。
誰もいないところに行こうと思ったのだ。
二人、普通に、一緒にいるだけで幸せ。そんなふうに思える場所を夢見て、竜児と大河は逃げ出した。
音もなく、雪が舞い始めた。このあたりでは寒くなっても、毎年あまり雪は降らない。
おそらくはこれがこの冬最初で、そして最後になるだろう。