♪1986年9月7日(日)西日本新聞 デビューしてまもない昭乃さんを紹介した新聞のコラムです。
記事本文 この夏、公開されたアニメ映画「ウィンダリア」の主題歌「約束」で、七月の末にデビューした新居昭乃。アマチュア時代に熱烈なファンを数多く持ち、その要望で第二の故郷ともいうべき福岡でソロコンサートを開いた実績を持っている。
東京生まれで東京育ちの彼女にとって、福岡はシンガー新居昭乃としての故郷だといえる。家庭の事情で福岡に移ったのが十九歳のとき。のんびりと育った彼女には、東京よりも福岡のリズムが体にあっていたという。
そののんびりぶりを伝えるエピソードに、こんなのがある。電車の席をとることができないというのだ。駅のホームの最前列にならんでいても、だめだというのだ。
「福岡って、町の動くテンポがゆっくりだし、自分のペースで生活することができたんですね。それに町全体に音楽が盛んで、私は子供のころから曲をつくったりしてたので、学生さん達のバンドの手伝いとしてコーラスとかピアノをたくさんしました」
認められるきっかけになったのは、ポピュラーソング・コンテストだが、それも絶対に賞をとるんだという意識はなかったほどののんびり屋。レコードデビューの話があったときも、実感はほとんどなかったという。
「母から、あなたは本当は歌が好きなのよ、何かひとつやりとげてみたらと言われて、決心したようなものです。それで人生のチャンスかもしれない、これまでやったことのない努力をしてみようかと」
そののんびり屋も、最近は、しっかりしなきゃと社会的責任をひしひしと感じている。相当頑張らないと大変だと、少しずつだが強い性格に変化してきているなと自分でも思うそうだ。
「人に強くものを言えるようになってきたんです。やはり、自分の作品をつくっていくわけですから、そうでないといけないんですよね」
その変化は、現在レコーディング中の作品にも現れてきている。プロとしての厳しさの中からつかみとったものだ。
「私は生々しい歌がいやで、イメージだけの世界というか、これまでは一枚ベールを通して世界を見るような詞だと言われてました。今度のLPは、私の年齢にふさわしくリアルなものをと考えています。ベールを通さなくても見えてくる、そんな歌を」
これまでのような歌は、頑張らなくてもできるから、今は頑張る方向で曲を作ってみたいのだという。アマチュアのころには、考えもしなかった彼女自身の変化。「プロとしての自覚ですね」と言う一方で「変わってきたのはストレスのせいかな」と微笑む。
「まだプロとしての実感はないけど、生活が充実していることはプロになってよかったなぁと思っています。一時も休めない。それが今は心地よく感じられるんです」
一生懸命になっているときは、だれかに聴かせるためではなく、自分のためにうたう感覚になるという彼女。その歌が同世代の女の子の共感を呼ぶ、今はそんな歌をうたっていきたいと願っている。
文・家崎 晴夫 写真・上牧 佑
あらい・あきの
昭和三十四年八月二十一日東京生まれ。五十九年春、ポプ・コン九州大会入賞。秋、つま恋大会入賞。世界歌謡祭出場。今年七月シングル「約束」でデビュー。十月に初LPを予定。また十月十六日名古屋ハートランドでコンサート。問い合わせは
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